ABC分析の落とし穴 ①
SERIESシリーズ記事ABC分析
2016年6月10日
2016年7月22日
今回はこんなお話
メニュー構成を考えよう
ABC分析をしてみよう
メニュー改訂どうやってる?
よほどの面倒くさがりでもない限り、大抵のお店では定期的にグランドメニューの入れ替えや、既存メニューの改良を行っていると思います。
では、メニュー改訂はどのような基準で行っていますか?
人気でしょうか?売上額でしょうか?はたまた気分でしょうか?
今回は、そんな時の強い味方、どこかで聞いたことのある、なんとなく専門的に見えるんだけれども、分かりやすく答えを出してくれる便利な分析方法と、その落とし穴についてです。
メニュー構成の重要性
言うまでも無いですが、メニュー構成は飲食店にとって非常に重要です。
売れるメニュー、集客力のあるメニュー、美味しいメニュー、独自のメニュー、それらが無ければ人気店にはなれませんよね。
ふむ…当たり前といえば当たり前ですね。
ただし、メニュー構成の重要性は、それだけではありません。
例えば、注文頻度の低いメニューの存在は、食材の不良在庫やロスの原因になるのはもちろん、調理する頻度が低いので作業効率も落ちます。もちろんクオリティに問題があるのならば、お店全体の評価を下げてしまいますよね。
たしかに!
たまにしか出ない商品って、いざオーダーが入ると段取りが悪くて作るのに時間がかかることありますね。
それにそもそもクオリティが低いから注文されないってのはヤバいっすね。
逆に注文頻度の高いメニューは、調理する頻度の高さから作業効率も高くなりますし、作業効率が高ければ提供時間も短くなります。
さらに人気のメニューは、派生メニューを作ったり、味・原価・価格などを見直せば、人気も利益もさらに高めることができます。
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ここまでのまとめ
-
- 注文頻度の低いメニューは、不良在庫やロスの原因になるだけではなく、作業効率の低下・提供時間の遅延も招く。
- 逆に注文頻度の高いメニューは、作業効率が高く提供時間の短縮も期待できる。
継続メニュー・中止メニューの判断基準
さて、そこで問題です。
普通にお店をやっていれば、よく出るメニュー、出ないメニューは、現場に立っていれば体験で、経営者としては数字で、ある程度はつかめますよね?
それなのに、わたしは今なぜわざわざこんな話をしているのでしょうか?
わかりません!
おまえはどんな時も態度だけは堂々としてるなオイ。
それは、どんな施策をするにせよ、根拠のあるデータをもとにしなければならないからです。
そうでないと、結果として成功しても失敗しても、それがまたデータとして残り今後に活かすことができないからです。
なるほど!
こういうデータをもとにしてこうしたらうまくいったとか、逆に失敗したとか蓄積していけば、次も成功させたり、次は失敗しないようにとか、考えることができるってことっすね!?
そうです。
後で成功の理由や失敗の理由を考えることができるというのはとても大事なことです。
ABC分析
そこで、ある程度簡単にメニューの入れ替えや改良の目安を算出できる方法として昔から親しまれている方法があります。
それがABC分析です。
ABC分析!
あ、オレ聞いたことありますわソレ。
そうですね。わたしの知る限りかなり昔から行われている手法ですから、ある意味古いやりかたとも言えます。
それでもまぁ、ひとつの目安としては使えますよ。ただし、記事のタイトルの通り、落とし穴もあるので要注意ですけどね。
落とし穴…(ゴクリ)
その落とし穴とは…?
それは次回の記事になります。まず今回はABC分析の基本を学んでいきましょう。
ABC分析の方法
ABC分析とは、全商品をなんらかの基準(基本的には売上高)の構成比順に並べて、上位70%を「Aグループ」70%~90%を「Bグループ」それ以下を「Cグループ」と分類するやり方です。
っと、言葉で説明してもピンとこないと思うのでこの表を見てください。
商品 | 単価 | 売上数 | 売上高 | 構成比 | 累計 |
---|---|---|---|---|---|
A | ¥1,000 | 924 | ¥924,000 | 21.0% | 21.0% |
G | ¥1,200 | 734 | ¥880,800 | 20.0% | 40.9% |
O | ¥980 | 811 | ¥794,780 | 18.0% | 59.0% |
I | ¥860 | 645 | ¥554,700 | 12.6% | 71.5% |
M | ¥650 | 578 | ¥375,700 | 8.5% | 80.1% |
K | ¥490 | 299 | ¥146,510 | 3.3% | 83.4% |
H | ¥500 | 220 | ¥110,000 | 2.5% | 85.9% |
E | ¥670 | 147 | ¥98,490 | 2.2% | 88.1% |
J | ¥300 | 325 | ¥97,500 | 2.2% | 90.3% |
C | ¥380 | 249 | ¥94,620 | 2.1% | 92.5% |
L | ¥250 | 369 | ¥92,250 | 2.1% | 94.6% |
N | ¥1,100 | 65 | ¥71,500 | 1.6% | 96.2% |
B | ¥1,500 | 46 | ¥69,000 | 1.6% | 97.8% |
D | ¥500 | 120 | ¥60,000 | 1.4% | 99.1% |
F | ¥400 | 98 | ¥39,200 | 0.9% | 100.0% |
ここで注目するのは右側の2列。
構成比と累計です。
構成比は、全商品の売上のうち、その商品の売上が占める割合。
累計は構成比が上位の商品から並べて、その構成比を累計していったものです。
ふむふむ。
この累計が
- 0%~70%の商品が「Aグループ」
- 71%~90%の商品が「Bグループ」
- 91%~100%の商品が「Cグループ」
となります。
なるほど。
売上に対する貢献度でグループ分けするわけですね!?
「構成比」とか言うとピンとこなかったけど、ようはその商品の売上が全体のどれだけを占めるかってことですもんね?
おう!オレは最初からわかってたぜ!
ぜってぇウソだわ…
グループに対する対処
はい。
とびぃさんの言う通り、貢献度と言った方がわかりやすいかもしれませんね。
というわけでお気づきでしょうけど、Cグループはメニューから排除する候補となります。
成績の悪い営業マンみたいなもんだな!
そいつがいても売上に貢献してないってことだもんな!
お…おぅ…
おまえが言うと説得力があるというか…アレだな。
そしてBグループは、なんらかの改善をすることで主力にもありえるけれども、現状そこまでの実力がないといった感じですね。
そのあたりも、人材に通じるものを感じますね。
-
ここまでのまとめ
-
- ABC分析は、商品の売上への貢献度を可視化する分析方法である。
- 売上構成比を上位から累計し、70%までがAグループ、90%までがBグループ、それ以下がCグループ。
- Aグループに分類された商品は主力商品。
- Bグループに分類された商品は中堅だが改善が必要。
- Cグループに分類された商品は排除候補と考えます。
落とし穴の入口
さて、落とし穴の話は次回といいましたが、その前にひとつ。
単純に累計が70%を超えていたらBグループ、90%を超えていたらCグループと考えてしまいがちですが、それはもう落とし穴の入口に足をかけています。
えっ!
それって…!?
たとえば、ここを見てください。
「I」の商品は71.5%ですが、その一つ上の「O」の商品が59%のため、70%以内に入っているといえます。
商品 | 単価 | 売上数 | 売上高 | 構成比 | 累計 |
---|---|---|---|---|---|
O | ¥980 | 811 | ¥794,780 | 18.0% | 59.0% |
I | ¥860 | 645 | ¥554,700 | 12.6% | 71.5% |
M | ¥650 | 578 | ¥375,700 | 8.5% | 80.1% |
同様に「J」の商品は90.3%ですが、一つ上のEの商品が88.1%ですので、90%の枠内に入っていると言えば入っていますし、売上高を見てもひとつ上位の「E」の商品との差はわずかですよね。
商品 | 単価 | 売上数 | 売上高 | 構成比 | 累計 |
---|---|---|---|---|---|
E | ¥670 | 147 | ¥98,490 | 2.2% | 88.1% |
J | ¥300 | 325 | ¥97,500 | 2.2% | 90.3% |
C | ¥380 | 249 | ¥94,620 | 2.1% | 92.5% |
あぁ、たしかに!
そういう場合はどう考えればいいんですか?
このような場合、特に厳密に考える必要はありません。
そもそも、えらそうにABC分析なんて言っていますが、所詮は目安と言うべきもので絶対的に信頼できる数字というわけではないですからね。
繰り返しになりますが、単純に累計が70%を超えていたらBグループ、90%を超えていたらCグループとバッサリと分類してしまわないよう、それだけ気をつけてください。
累計の数字だけを見て単純にグループ分けをしていたら、「I」はBグループになり、「J」はCグループになっていました。
安直な分析は無意味
さて、ここまでを踏まえてABC分析に当てはめるならば、A・G・O・IがAグループ、M・K・H・E・JがBグループ、それ以下がCグループになりますね。
そして、Aグループは主力なので残留。Bグループは残留もしくは改良・改善の上で残留。Cグループはクビを検討。と考えるのが基本的な考え方です。
ふむふむ。フツーに理にかなっていると思いますけど…落とし穴ってのがまだ見えないっすねぇ。
そもそもの話になってしまいますけど、そんな安直なことしかしないのならば、そもそもABC分析なんてする必要はありません。時間の無駄ですよ。
えっ!?
だって根拠のあるデータをどうこうって、はたさんがそう言ってABC分析を教えてくれたんじゃぁ…
だって、この程度の分析でわかる程度の人気・不人気のならば、それこそ分析なんてしなくても感覚や体験である程度わかりませんか?
たしかに…
よく出る商品とかあんまり出ない商品くらい、だいたいなんとなくでわかりますね。
でしょう?
感覚や体験で把握できる程度のことしかわからないのなら、そんなものは分析でもデータでもありません。
データを扱うことに慣れていない人は、なんとなくそれっぽい分析やデータを見ると、なんとなく納得して、なんとなく信じてしまいますからね。
あ~、わかりますわそれ。
営業とかプレゼンとかって、だいたいそうやって、それっぽい資料を見せて相手を誤魔化してまるめこんでる感じしますもん。
グラフに単位や目盛りや数値が無かったり、本題には全く関係のない無い数字が羅列されていたり、さらにそんな無意味な数字にこれ見よがしにマーカーで印をつけていたり、「そ れっぽい」だけの資料を持参する業者は非常に多い。
「それっぽい」資料を見せられ「それっぽい」説明をされると、「なんとなく」納得してしまう人が多いという悲しい事実である。
そうそう。営業マン自身が資料のなかみをロクに把握してなかったりな。
(自分のことを言ってるな…)
たしかに、その手のやりくちにコロっとまるめこまれるタイプの人は多いですよね。
なんにせよ、データは有用なものですが、使い方によっては全く役に立たないどころか、害になったり他人を騙す道具になったりするものです。
というわけで、今回はここまでです。次回はいよいよABC分析の落とし穴についてですよ。
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今回のまとめ
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- ABC分析は手軽にメニューの力量を数字にできる。
- しかし注意点もあるので続きの記事を見てください。
次回予告
今回は、ABC分析の基本的な部分をまとめました。
分かりやすく商品ごとの売上構成を見られますし、普段から売上をデータ管理していればいつでもすぐにできるのも、このやり方の強みです。
さて、思ったよりも基本的な説明に手間がかかったので、続きはまた後日にしますが、賢明な方ならばわたしの言う落とし穴がなんなのか、既にお気づきかもしれませんね。
それでは、また次回。ごきげんよう。
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