原価率の呪い
SERIESシリーズ記事原価率
今回はこんなお話
原価率はやっぱり30%がいいの?
原価率を上げれば商品力もあがる。
高い原価率でも利益が上げるには。
原価率ってどうすればいいの?
近年は、一昔前と違い消費者の原価に対しての意識が高く、外食に対してコストパフォーマンスを求める傾向が強くなってきていますね。
これは飲食業界に限った話ではないですが、その結果として異常なまでの安売り競争になってしまい、業界全体が衰退し、労働環境も劣悪化の一途を辿っているのは非常に悲しく思います。
そのような風潮の中で商品をどの程度の原価で提供するのか。今回はそんなお話です。
コストパフォーマンス
さて、近年はコストパフォーマンスなどと長ったらしく言わず、コスパなどとよく言われますが、日本語で言うとお値打ち感とでもいえば一番近いでしょうかね?
客側の立場としてはコスパはよいに越したことはありませんよね。
うんうん。
やっぱりコスパ大事だよね~。
でもあまりにもコスパのよいお店をみると、このお店は経営大丈夫かな?と思ってしまうことがありますね。
簡単にお値打ち感を出そうと思えば、単純に原価率を上げればいいですよね。
そもそもお値打ち感という言葉が指すとおり、その商品に価格に見合った値打ちがあると思わせられるか否かなのですからね。
でも原価率を上げれば利益は下がりますよね。
そう。これは永遠のテーマとも言えます。
どのような業種・業態であれ常につきまとう問題で、それゆえに簡単に語れるものでもありません。
というわけで、今回は原価率について初歩の初歩から考えてみたいと思います。
原価率は30%?
「飲食店の原価率は30%」とか「30%より増やすと儲からない」とかよく聞きますけど実際のところどうなんですか?
えっ!?
むしろ30%しか原価ってかけないものなの?そっちにビックリだよ!
「原価率は30%」と、それはもうかなりの昔から伝説のように語り継がれていますね~。
まるで飲食店の経営においての常識のように。
なぜか昔から語り継がれている伝説のパワーワード。
昨日の常識は今日の非常識。
しかし実際はどうでしょうか?
素人目に見てもかなり原価率が高そうなメニューを目玉商品にして客を集めている店や、原価率が高いことを公表して客を集めて繁盛している店が数多くありますよね。
そうだよね。
だいたい、あからさまに原価率低いものなんて食べに行きたくないよ。
原価率が低くても、料理人の腕が良いとか、サービスが良いとか、雰囲気が良いとか、ちゃんとした付加価値があればいいですけどね。
生産したものの価値と、それを生み出す元となった「もの」の価値との差のことである。
一般的に、何らかの「もの」を使って新しい「もの」を生産すると、元々の価値より高価値になる。
このようにして高価値となることについて「価値が付加される」という意味合いで、「付加価値」と呼ばれる。
付加価値のことはややこしくなるので今回は一旦おいといて…
当然ながら基本的には原価が高ければ商品力も高くなります。商品力が高くなれば客が増えやすくその結果として繁盛するわけです。
でも利益が少ないと意味がない?
でもいくら繁盛したところで原価が高いってことは利益も少ないでしょ?
それに客が増えるかどうかもわからないのに原価を高くするのって怖くないですか?
確かにそうです。利益は多いに越したことはないですからね。
しかし、待ってください。原価率は利益を決める絶対的な要素ではなく、利益を決める様々な要素の一つに過ぎないのです。
その様々な要素を組み合わせてしっかり利益を確保できるのならば「原価率を低くしなければならない」という、いわば呪いのようなものからは解放されます。
粗利と回転数
さて、というわけで今回は回転数という要素を加えて考えてみましょう。
まずは下の表を見てください。
ザックリしたどんぶり勘定なのは許してくださいね。あくまでわかりやすさ重視です。
細かく計算などをしないで、おおまかに金の出し入れをすること。
昔の職人などが「どんぶり」の中に金を入れておいて、無造作に出し入れして使ったところが語源。
ただしここでいう「どんぶり」とは「職人の腹掛けの前部に付いている物入れ」のことであり、食器の「どんぶり」は正確には「どんぶり鉢」である。
共通事項 | |
---|---|
人件費 | 1人あたり10,000円 |
従業員数 | 6人 |
客単価 | 5,000円 |
1回転 | 20人 |
原価率30%で2回転
回転数 | 売上 | 原価 | 粗利 | 人件費 | 利益 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 100,000 | 30,000 | 70,000 | ||
2 | 100,000 | 30,000 | 70,000 | ||
合計 | 200,000 | 60,000 | 140,000 | 60,000 | 80,000 |
原価率40%で3回転
回転数 | 売上 | 原価 | 粗利 | 人件費 | 利益 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 100,000 | 40,000 | 60,000 | ||
2 | 100,000 | 40,000 | 60,000 | ||
3 | 100,000 | 40,000 | 60,000 | ||
合計 | 300,000 | 120,000 | 180,000 | 60,000 | 120,000 |
見ての通り原価率30%で2回転したとき、原価率40%で3回転したとき、それぞれの一日の売上・原価・粗利、そしてそこから人件費を引いた利益を計算してあります。
売上高から売上原価を引いたもの。
そこからさらに諸々の経費を引いたものが「営業利益」である。
やっぱり回転数が多くなればフツーに利益が増えますね。
はい。何回転させても同じ人件費という前提ですが、この表ですと1回転目で人件費分はすでに回収できているんですよね。
ですから、2回転目からは売上から原価を引いたものがそのまま利益になっています。
おおざっぱに言ってしまえば、原価率を抑えることよりもお客を増やすことを考えるべきだということでしょうか?
当然至極かもしれませんが。
全くその通りです。
最悪なのは、お客が少ないから経営が苦しいのに、原価率を抑えて利益を確保しようとすることです。
理由は言うまでもないですね。
よけいにお客さんが減ってしまう……
はい。同様に安易に人件費を削るのも良くないですね。
これもまた理由は言うまでもないですが。
商品の提供が遅れたり、サービスの質が落ちる、結果として余計に客が減る。ですね。
はい。その通り。
さて、今回の例は単純計算すぎて、現実とかけ離れた試算ではありますが、大切なのはただ一つ、原価率のみに縛られる必要は無いということです。
今回は高い原価率を回転率で補うという例を出しましたが、他にもたくさんのやり方があります。そのお話はまたいつかしましょうかね。
従業員を労働基準法を無視してコキ使ったり、廃棄食材を使用したり、レビューサイトで競争相手の悪評を拡散したりとか?
長時間労働や時間外手当の未払いなどが飲食業界では常態化している。
他にも固定残業制度(みなし残業制度ともいう)をうまく利用して低賃金で長時間労働をさせている店舗も多い。
バイトにタイムカードを切らせてから働かせるとか、時給を30分単位でしか払わずに25分にタイムカードを切らせるとか、よく聞きますね。
時給を1分単位で計算しない行為は労働基準法違反である。
ただし、1円未満の端数を四捨五入して計算するのは認められている。
また、1ヶ月間における時間外労働・休日労働・深夜業の時間数は、30分未満は切り捨て、それ以上は1時間に切り上げて処理することが認められている。
なお、遅刻・早退に関しては、就業規則に定めておけば減給の制裁として、30分の時給カットなどを行うことはできる。
いや……そういうのはウチでは推奨していません……
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今回のまとめ
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- 原価率に縛られてはいけない。
- 原価率は利益を決定する絶対的要素ではない。
- 原価率は様々な要素の一つに過ぎない。
- 原価率を抑えることありきで考えてはいけない。
原価率を含め、コストの考え方はネタがたくさんあるので、今後も記事が増えていくと思います。そちらも参考にしていだければ幸いです。
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