人件費と原価

2016年7月18日
はたさん はたさん
経営 コンセプト コラム
この記事は 10 分くらいで読めると思います
人件費と原価
人件費と原価

SERIESシリーズ記事原価率

今回はこんなお話

人件費を商品提供の原価として考えてみよう。

ビジョン無き人件費の削減は商品力を低下させる。

まえがき

とある飲食店にて・・・

みーたむ
みーたむ

このお店、いつ来ても待たされますね…

むこりん
むこりん

うん。席はたくさん空いてるのにね…

片付けが間に合ってないんだよね。いつ来ても。

もうちょっとスタッフ多めに入れればいいのに…

あーたむ
あーたむ

アレでしょ?アレ。

「ハニトラ」的な。

それで働く人が少ないんだよ。

みーたむ
みーたむ

もしかして「リストラ」と言いたいのですか?

あーたむ
あーたむ

そうそれそれ!

むこりん
むこりん

「ハニトラ」と「リストラ」…似てるっちゃ似てるけど…

ハニトラのせいでスタッフ不足の飲食店を想像できない…

notes
ハニトラ

「ハニートラップ」の略称。「甘い罠」。

色仕掛けによる諜報活動。主に女性が男性に仕掛けるものを指すが、男性が女性に仕掛ける場合もある。

ターゲットを懐柔し意のままに操ったり、弱みを掴んで脅迫したりする。

冷戦時代、共産圏の国の諜報員が頻繁に行ったといわれる。

notes
リストラ

「Restructuring(リストラクチャリング)」の略で、本来の意味は「再構築」である。

日本でリストラと言えば経営不振による「解雇」の意味で使われることが多い。

人件費の削減て本当にいいこと?

みーたむ
みーたむ

・・・ということがさっきありましてね。

これが我が姉だと思う恥ずかしさと、珍獣を眺めているような面白さとが半々の、なんとも言えない気持ちになりました。

うりぼぅ
うりぼぅ

まぁ、アイツはバカだから仕方ないな。

みーたむ
みーたむ

あーたむも、兄様には言われたくないでしょうけどね。

うりぼぅ
うりぼぅ

はたさん
はたさん

相変わらずナチュラルに酷いことをいいますね。みーたむさんは。

むこりん
むこりん

それにしても、人手不足なのか人件費をケチってるのか知らないけど、あーいうのって誰も得しないよね。

客は無駄に待たされるし、スタッフは忙しいし、待てずにお客さん帰っちゃったらお店の売上も落ちるし…

うりぼぅ
うりぼぅ

それに、席が空いてるのに待たされるのって、すっごくイメージ悪くなるよな。

あと、ちょっとアレな客だったらクレームつけられるからスタッフも大変な。

はたさん
はたさん

悪いのは少ない人数しかシフトに入れない店長やオーナーなのに、クレームを受けるのは少ない人数で頑張っているスタッフですからねぇ。

みーたむ
みーたむ

一時的な人手不足とか、たまたま予想以上の客足の多さだった場合は、まぁ仕方ないかもしれませんが、あのお店はいっつもですもんね。

はたさん
はたさん

それは非常にもったいないですねぇ。

店側からしたら典型的なチャンスロス。

人件費をケチったあげくに、客を得る機会をわざわざドブに捨てているようなものですよね。

notes
チャンスロス

売上を伸ばす機会があったにもかかわらず、その機会を逃し本来得られたはずの利益をあげられないこと。機会損失。

和製英語。

むこりん
むこりん

いままで関わったお店でも、人件費をケチりすぎてうまくまわってないとこ、結構ありましたよね。

はたさん
はたさん

そうですねぇ。

しかも、そういうお店に限って、オーナーは「スタッフが役立たずで給料泥棒、もっと働いてもらわないと困る」と嘆き、スタッフは「人数が足りない、新人教育する暇もない、給料も安くて割に合わない」とぼやいているというね。

みーたむ
みーたむ

ですが、飲食業に限った話ではなく、経費削減といえば大抵の場合まず人件費が槍玉に挙げられますよね。

はたさん
はたさん

それだけバk…愚昧な経営者が多いということなのでしょう。

ほんの少し考えれば、ビジョン無き安直な人件費削減は、目先しか見えていない超近視的な施策であることは明かなのに。

事業縮小などならともかく、仕事内容も仕事量も変わらないまま人だけを減らしてうまくいく道理などありませんからね。

みーたむ
みーたむ

(わざわざ言い換えていましたが、バカと愚昧に大差は無いような気がします…)

はたさん
はたさん

以前、原価率だけにとらわれてはいけないという話をしましたが、同様に人件費だけにとらわれてもいけません。

ここにいるみなさんには言うまでもないでしょうが。

みーたむ
みーたむ

ですね。

むこりん
むこりん

うんうん。

うりぼぅ
うりぼぅ

もちろんですよ!

あーたむ
あーたむ

わたしわかんなーい

あと、おにいもきっとわかってないよ~。

うりぼぅ
うりぼぅ

ちょっ…

はたさん
はたさん

では、おふたりのために今回は人件費についてのお話をしますか。

ですが、その前にワンクッション。原価についてすこし掘り下げてみましょう。

原価についての掘り下げ

はたさん
はたさん

まず原価とは

特定の目的を達成するために消費される経済的資源を貨幣で測定したものである。
原価 - Wikipedia

とあります。

むこりん
むこりん

まんまだね。意味。

わざわざ難しくややこしく言い換えてるけど。

はたさん
はたさん

はい。まんまです。

そして、これを飲食店にあてはめると「特定の目的」というのが商品の提供ですね。そして「消費される経済的資源」が商品を提供するためにかかる費用となりますね。

さて、ここで何か気づきませんか?

みーたむ
みーたむ

そうですね…飲食業で原価というと、普通は材料費を指すと思うのですが「商品を提供するためにかかる費用」という言い方にすると、商品を作る人や運ぶ人などスタッフの人件費も原価ということになりませんか?

原価と材料費
はたさん
はたさん

そうなんです。

少し話がそれますが、電化製品や日用品など、身近に売られているもののほとんどが、商品開発や広告宣伝などにかかった費用も含めて価格が決められています。

むこりん
むこりん

あぁ~。よく聞きますねそれ。

ひとつ1万円近くする化粧水も材料費は数百円とか。

あーたむ
あーたむ

なにそれ?超ボッタクリじゃん?

むこりん
むこりん

なんかね、開発費がすっごいかかってるかららしいよ。

だからそれくらいで売らないと利益が出ないんだってさ。

みーたむ
みーたむ

そういえば薬もそのような感じですよね。

後発医薬品は開発費がかかっていないから安いといいます。

notes
後発医薬品

ジェネリック医薬品・もしくは単にジェネリックとも呼ばれる。

特許が切れた医薬品を、他の製薬会社が同じ有効成分で製造したもの。

対して先発医薬品は莫大な開発費と年月をかけて作られている。

あーたむ
あーたむ

だったらさ、開発費の元をとったらあとはスッゴイもうかっちゃうね!

はたさん
はたさん

大抵の場合、利益は次の商品の研究開発にあてられますよ。

化粧水にしても薬にしても、そうやって次々に新しい商品を開発してくれるから、わたしたちはその恩恵を受けられるのです。

あーたむ
あーたむ

そっか~。ま、どうせそんな高い化粧水使わないからどーでもいいけどさ。

むこりん
むこりん

いいか小娘。よく聞け。

若いうちはそれでいい。だがな、歳をとると若いときと同様のケアでは間に合わなくなってしまうのだ。

いつか貴様にもわかる日が来る……

あーたむ
あーたむ

えっ!?えっ!?なにそれこわい!?

みーたむ
みーたむ

………

うりぼぅ
うりぼぅ

………

はたさん
はたさん

え~っと…まぁそうですね。よくわかりますよ。はい。話を戻しまして…

言いたかったのは、商品の価格を決定する際に、商品を作るためにかかった費用を元にしますが、普通はその中に人件費も含まれているんですよね。これを製造原価といいます。

notes
製造原価

材料費・労務費・経費を合わせたもの。

はたさん
はたさん

この言葉の意味が示すように、ものを作る際にかかるコストには人件費(労務費)が含まれるのが普通なんですよね。

飲食店における材料費以外の原価
うりぼぅ
うりぼぅ

でも、飲食店で原価っていったらヤッパリ材料費ですよね?

はたさん
はたさん

そうなんです。

それ自体は別に悪いことではないんですが、人件費が商品やサービスにも影響を与える。つまり店の価値に影響を与えることを忘れている方が多い。これが良くないのです。

うりぼぅ
うりぼぅ

あ~。さっき言ってた、席が空いてるのに客を待たせてしまうとかですね!?

みーたむ
みーたむ

商品の提供に時間がかかったり、商品の質が下がったりすることも考えられますね。

むこりん
むこりん

接客も丁寧にできなくなるしね。

あーたむ
あーたむ

うんうん。そういうお店はイヤだね~

はたさん
はたさん

そう。そういうのが、人件費を原価として考えていない典型的な例です。

言うまでもなく「原価」と「客の満足度」との関係は密接ですよね。

基本的に原価が高い方が満足度も高くなるわけですが……

みーたむ
みーたむ

なるほど。

人件費も商品の原価のうちと考えれば、人件費をむやみに削ることは、商品の材料費を惜しむのと同様のリスクが生じる。ということですね。

はたさん
はたさん

そう。提供される商品そのものだけではなく、スタッフの技術・スピード・接客・その他もろもろのサービス、つまり「人的な原価」も含めて客はお店を判断しますからね。

とすると、他の条件は変わらないものとして人件費だけを削減すれば全体的に商品力が下がることは明かですよね。

ここまでのまとめ

  • 人件費の削減は、商品・サービス・店の価値に悪影響を与える。
  • 人件費の削減は、材料原価を惜しむのと同様のリスクが生じる。
  • 人件費の削減は、商品力・サービス・店の価値に影響を与えない範囲でなければいけない。

簡単な試算をしてみる

はたさん
はたさん

では簡単に試算をしてみましょう。

原価率のお話の時の表に似ていますが、今回は原価率は同じものとして、従業員数と回転数を変化させています。

共通事項
人件費 1人あたり10,000円
客単価 5,000円
1回転 20人
原価率 40%

従業員数2人 1回転

回転数 売上 原価 粗利 人件費 利益
1 100,000 40,000 60,000
合計 100,000 40,000 60,000 20,000 40,000

従業員数4人 2回転

回転数 売上 原価 粗利 人件費 利益
1 100,000 40,000 60,000
2 100,000 40,000 60,000
合計 200,000 80,000 120,000 40,000 80,000

従業員数6人 3回転

回転数 売上 原価 粗利 人件費 利益
1 100,000 40,000 60,000
2 100,000 40,000 60,000
3 100,000 40,000 60,000
合計 300,000 120,000 180,000 60,000 120,000
あーたむ
あーたむ

すごい!わたしでもわかるくらいザックリしてる!

みーたむ
みーたむ

わかりやすいよう、わざとどんぶり勘定にしているのですよ…

はたさん
はたさん

そうですね。実際の経営がこんなに単純ならばいいんですが、まぁこれはイメージとして見てください。

なにか感想はないですか?

うりぼぅ
うりぼぅ

人件費をケチってたくさんの客をさばけない時よりも、ちゃんと人を増やして客をたくさんさばいた方が儲かりますね。

当たり前っちゃ当たり前なんですけど…

みーたむ
みーたむ

原価率の時と同じで、結局のところ経費の削減よりも「客を増やすことを優先的に考えるべき」ということですかね。

むこりん
むこりん

「客が来ない」→「お金がかけられない」→「人件費や原価をケチる」→「余計に客が来なくなる」

この流れってダメなお店の王道パターンだもんね。

あーたむ
あーたむ

ダメなのに王道って……

うりぼぅ
うりぼぅ

でも、オレの経験上、「じゃ、その客数をキープしつつ人件費を減らせばもっと利益があがる」みたいな考え方をするオーナーや店長が多いですけど…

むこりん
むこりん

黒いね~。

みーたむ
みーたむ

飲食業界のブラックっぷりはもはや周知の事実ですからね…

はたさん
はたさん

そういう方のされているお店はどのみち長くは続かないですけどね。

商品・サービスの質の低下はもちろん、スタッフのモチベーションの低下も激しいですし。

みーたむ
みーたむ

客が多いということは忙しいということで、忙しい中で商品やサービスの質を低下させないためには、しっかり人件費をかけましょうということですね。

はたさん
はたさん

そう。適切な人件費は必要不可欠。

人件費に限らず、経費は無理に削減するものではなく、適切にかけた上でそれを回収し利益を出す方法を考えるものなのです。

実際、商品提供のたびにかかる材料費とは違い、人件費は客数・商品提供数にかかわらず基本的に一定なので、一旦回収した後は利益が大幅に増えているのがわかると思います。

むこりん
むこりん

「客が来る」→「お金がかけられる」→「商品やサービスが充実する」→「もっと客が来る」

良いお店の王道ですね!

FLコスト

はたさん
はたさん

しかし実際には「人件費を含め商品を提供するためにかかる費用」を厳密に計算するのは難しいですし、何度も言うように、実際の経営ではこんなわかりやすい数字ではないですよね。

というわけで、もう少し簡単に材料費や人件費が適正であるかどうかを見極める目安がFLコストです。

FLコスト
材料費+人件費
はたさん
はたさん

このFLコストの売上に対する割合を見れば、適切な運営ができているかだいたいわかります。

みーたむ
みーたむ

目安として、最低でも売上の65%以内、できれば60%以内に収まれば良い状態と言いますよね。

はたさん
はたさん

はい。というわけでさきほどのザックリどんぶり勘定の試算ですが、それぞれのFLコストを見てみましょうか。

あーたむ
あーたむ

え~っと…割合…パーセントを計算するには……

うりぼぅ
うりぼぅ

あれ?どうだったっけ……

みーたむ
みーたむ

こうですよ。

FLコスト比率の計算
( 材料費 + 人件費 )÷ 売上
むこりん
むこりん

こうだね!

それぞれのFLコスト
従業員数2人 1回転
( 原価 40,000 + 人件費 20,000 )÷ 売上 100,000 = 60%
従業員数4人 2回転
( 原価 80,000 + 人件費 40,000 ) ÷ 売上 200,000 = 60%
従業員数6人 3回転
( 原価 120,000 + 人件費 60,000 ) ÷ 売上 300,000 = 60%
うりぼぅ
うりぼぅ

全部60%だな!

はたさん
はたさん

はい。そうですね。そうなるように作りましたので。

わかりやすいでしょう?

あーたむ
あーたむ

はい!わたしでもわかるくらいわかりやすい!

はたさん
はたさん

さて、最後に。

しつこいようですが、FLコスト比率60%を目指すためにやるべきことは、むやみに原価や人件費を削減して60%に収めようとすることではなく、客を増やし売上を増やすことです。

人件費を必要以上に削減して客が増えるわけがありません。

みーたむ
みーたむ

人件費を削減することで一時的に利益が増えている状況のお店はすでに末期ですよね。

はたさん
はたさん

そう。誰だって売上を増やしたいと思っているはずなのに、なぜか人件費はとことんきりつめようとする経営者の方がたくさんいらっしゃいます。

売上を上げたいのに人を減らしている時点で完全に矛盾しているんですよ。

原価や人件費をかけてでも客数を増やし、結果として利益を出せるようにするか、原価率や人件費にとらわれ続け、緩やかに下り坂を転がり続けるか、どちらが良いかは一目瞭然だと思うんですけどね。

むこりん
むこりん

でも、無駄な人件費は削減するべきですよね。

はたさん
はたさん

はい。もちろんです。

むこりん
むこりん

じゃぁまずは割合の計算ができない人から…

みーたむ
みーたむ

それは名案ですね!

今回のまとめ

  • 人件費を削る努力よりも客を増やす努力をすべき。
  • 人件費は商品力を左右する重要な要素である。
  • FLコストが売上の60%以内におさまればベター
はたさん
はたさん

従業員の質と数に余裕がなければ、新しい従業員の教育すらまともにできず、さらに従業員の質は下がる悪循環に陥ります。

そして、従業員の質の低さはサービスの質の低下や機会損失に直結し、当然の帰結として売上の低迷を招きます。

それなのに、従業員の質が低いと愚痴りながら人件費を削っているオーナーさんを見ると、人間は本質的に外罰的な生き物なのかなと、物思いにふけってしまう今日この頃です。

SERIESシリーズ記事原価率